高脂血症の治療の現在
治療の第一の目的は動脈硬化の予防。糖尿病などほかの危険因子があれば、その治療も並行して行います。
高脂血症以外のリスクがあれば治療目標値がきびしくなる
コレステロール値や中性脂肪値が高い場合、動脈硬化の進行を抑えて狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの発病を防ぐために、自己療養や治療が必要です。
ただし、動脈硬化や、動脈硬化が原因で起きる心疾患を引き起こす要因は、加齢、高血圧、糖尿病、喫煙など高脂血症以外にもたくさんあります。とくに、高血圧は高脂血症と並ぶ大きな危険因子で、高脂血症、高血圧、喫煙が動脈硬化の三大危険因子とされています。
したがって、治療にあたっては高脂血症以外の要因も考慮しなければなりません。たとえ、コレステワール値が220mg/dl未満でも、高脂血症以外の危険因子を3つ以上持っている場合や、糖尿病や脳梗塞を合併する場合、過去に冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)を患ったことがある場合は、治療目標とする数値が低くなります。
生活習慣を見直す自己療養が基本。薬物療法は慎重に行いたい
高脂血症の治療の基本は、食生活やその他の生活習慣の改善、運動療法を行う非薬物療法(自己療養)です。
高脂血症が軽度~中等度で合併症などがない場合は、非薬物療法を3ヵ月程度行って、目標値より高めでも数値が下がってきている場合は、薬を使わないで、気長に自己療養を続けます。
しかし、3~6ヵ月続けても治療効果が出ない場合は、薬を使うかどうか検討します。また、糖尿病などを併発している場合は、その合併症の治療も必要です。
一方、過去に冠動脈疾患を発病したことがある人や、家族性高コレステロール血症の人などは、早い段階から薬物療法が行われます。その場合も、非薬物療法が並行して行われます。
高脂血症治療で使われる主な薬剤
薬物療法を行う際は、検査値だけでなく、患者それぞれの年齢、性別、生活習慣、遺伝的素因、合併症の有無、病歴などを考慮して決められます。
スタチン系薬剤(HMG-COA還元酵素阻害薬)
肝臓でコレステロールが合成されるのを抑える作用があります。LDLコレステロールを減少させます。
フィブラート系薬剤
中性脂肪の合成を抑え、小型LDLコレステロールを減少させ、HDLコレステロールを増加させます。
プロブコール
LDLコレステロールの酸化と血管壁への沈着を抑制します。
レジン(陰イオン交換樹脂)
胆汁酸とコレステロールを体外へ排出する作用かおり、LDLコレステロールを減少させます。
ニコチン酸誘導体
肝臓で中性脂肪が合成されるのを抑え、LDLコレステロールを減少させます。
インスリン抵抗性改善薬
糖尿病の治療で使用される薬ですが、インスリン抵抗性を改善し、小型LDLコレステロールを減少させる作用があります。
日本と欧米の診断基準の違い
日本の高脂血症の診断基準値は、欧米より低く設定されています。日本では診断を主目的としており、リスクかおる人をいかに見つけるかという趣旨が強いからです。
たとえば、基準値の上限を220mg/dl未満にしているのは、動脈硬化が進行しやすい家族性高コレステロール血症は、日本人ではコレステロール値が220mg/dlぐらいの人も多いからです。
それに対して欧米では、基準値を300mg/dl程度とし、高リスクの人だけを治療する方針をとる国も多いです。
この背景には、欧米の医療費が高額であり、健康保険制度の枠内で、すべての患者をケアしづらいという事情もあります。
